――― glory  ―――





生まれたての朝の光の中。

静かに微睡む君の唇をそっと塞いだ。

キラキラと薄紅の髪が光の欠片を映し出す。

ふっくらと柔らかい感触。

仄かに甘い香りがして、思わず舌で拭いたくなる。



「ん・・・」



喉の奥のくぐもった声。

それすらも愛おしくて堪らない。

零れ落ちた吐息を拾い集めて、また、そっと君に触れてみる。

微かに身じろぐ剥き出しの肩。

軽く指でなぞると、誘うような翡翠の瞳がゆっくりと開かれた。



「せ・・・んせ・・・」



薄っすらと上気した頬が、幸せそうに笑っている。

おずおずと伸ばされる白く細い指。

惹かれるように重なり合って、そして、しっかりと繋ぎ合った。

そういえば・・・。

昨日もこうして君と手を繋いでいたよね。

蕩けるような甘美な記憶。

誰よりも早く「おはよう」と伝えたくて・・・。

愛しい温もりに、そっと身を摺り寄せた。



穏やかな熱が身体中を伝わる。

花の香りが鼻腔をくすぐり、思わず大きく息を吸い込む。

この指も・・・この髪も・・・この唇も・・・。

この声も・・・この肌も・・・この微笑みも・・・。

今は全てオレだけのもの。

そう、君はずっとオレだけの君だから――



嬉しそうにしがみ付く君の身体をぐっと引き寄せ、そのまま何度も甘噛みを繰り返す。

白い肌に残された鮮やかな昨日の余韻。

無粋なシーツを剥ぎ取りながら、一つ・・・また一つ・・・と記憶の名残を辿っていく。



「あん・・・」



くすぐったそうに身を震わせて、華奢な喉元を露わにして。

うっとりと潤んだ瞳をオレに向けて、はにかみながら君が微笑む。

まるで花のように・・・。

風をまとい、季節をまとって、天使をいざなう花のように。



ああ・・・、どんな天使も、君には太刀打ちできないよ。

たとえ君が、気紛れでこの地に舞い降りた女神であっても構わない。

その瞳に映るのが、オレだけならば。

この肌に触れて愛を交わすのがオレだけならば、喜んで君の前に平伏すから――



だから、甘い呪縛で繋ぎ止めるんだ。

ここから君が消えてしまわないように。

悪い夢だけを拭い去って、君をオレで満たしてあげるよ。

白いうなじに顔を埋めて、そっと身体をまさぐって。

昨日の記憶を呼び覚ましながら、また一緒に夢を紡ごう。



永遠に途切れる事のない甘美な夢を――



君と。

ずっと、君だけと。